プリント基板の製造の生命線は、やはり回路です。そして回路をプリント基板上にどのように張り巡らすかが、基板製作の技術革新の見せ所といえます。近年の電気製品は、いかにコンパクトに作るかという点が重要視されています。そのためひとつのプリント基板に要求されるサイズは格段に小さく、回路情報量は格段に多くなってきています。
回路情報を多くするためには、主にふたつの方法があります。
ひとつは狭い面積により多くの回路情報をもたらすため、回路幅と回路間隙を小さくすることです。今後のテーマは、ピン間5本仕様の回路をもつプリント基板の製造を量産体制にすることでしょう。
もうひとつの方法は、回路情報を複数の基板上に振り分け、これを積層してしまうというものです。これを多層基板といいます。多層基板のメリットは、与えられたプリント基板用のスペースを立体的に活かせることです。初期の片面・両面基板では、最終的に回路幅や回路間隙を狭めることで小型化を図りましたが、歩留まり率の低下が問題でした。そこで多層基板を採用することによって、回路情報を数倍にすることができたのです。
注目されるのはリードタイムでしょう。量産製品であれば納期のコントロールは効きやすいのですが、試作品の場合は事情が異なります。一般にプリント基板の試作はリードタイムが異様に短くなるものです。電気製品は通常、仕様と外観が並行して設計され、その後で基板の設計に着手されます。しかし製品組み立てにおいては真っ先に必要となるのがプリント基板です。そのため試作時においては特に短納期対応が期待されています。
多層基板は回路形成の工程を経てから複数の基板を貼り合わせ、その上で回路形成の二次加工を行ないます。単純に考えれば片面・両面板の2倍の工期がかかります。